作業療法士×就労支援 

就労移行支援事業所で働いているOTの忘備録です。

自分が「自分」でいられるコフート心理学入門

タイトルの通り、超初心者がコフート心理学を知るための

第一歩となる本です。

 

著者の和田秀樹氏のプロフィール

1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒。東京大学医学部付属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学学校国際フェローを経て、現在は精神 科医。国際医療福祉大学教授。ヒデキ・ワダ・インスティテュート代表。一橋大学国際公共政策大学院特任教授。川崎幸病院精神科顧問

 出典:Amazon.co.jp: 和田 秀樹:作品一覧、著者略歴

 

和田氏は日本における自己心理学コフートの提唱した心理学)の

第一人者であり、入門書としては安心感がありますよね。

 

ではコフート心理学の魅力とは何でしょうか?

 

私はズバリ「人間を弱い存在だと認めていること」だと思います。

 

精神分析の大家フロイトの心理学は

自我を鍛えることで無意識の中にある課題を克服できるよう考えて

いました。

フロイト自身、超絶 強い精神力を持つ人物だったそうです。

 

一方フロイトのお弟子さんでもあるコフート

人間はそんなに強い存在ではない、と捉え

治療者に適度に依存しながら、自己愛を満たし前進できるような

精神分析手法を確立しました。

 

同じ精神分析でもずいぶん違いがありますね!

 

自分が変われば相手が変わり、相手が変われば自分も変わるー

そうやって、治療者と患者が相互に依存する関係性の中で患者の

心が発達していくのが、コフートのたどり着いた治療モデルなのです。

(本文より)

 

この「治療者と患者が相互に依存」というのがフロイト精神分析とは

大きく異なる視点です。

というのもフロイト精神分析は「治療者が患者の課題を見出して

教えることができる」と考えているからです。

このような考えのもとでは、治療者と患者とは明確な一線を引くべき

であり、相互に依存などどいう関係はありえないのです。

 

コフートの心理学は「共感の心理学」と言われていて

治療者は患者の考えを理解・共感する親や友人のようなポジション

なるそうです。

悩んでいる時って、別に答えをもらわなくても

「わかる、わかる」と言って欲しいだけの時ってありますよね!

そんな共感が患者の自己愛を満たし、患者自身が前進する助けになると

考えられています。

 

またコフートの大発見は、人間には「他人とは違った存在でいたい」

という願望がある一方で「他人と同じ存在でいたい」という願望もある

ことを見出したことです。

例えば先輩や上司が「自分も昔こんな失敗をやってね・・・」と話して

くれることで「失敗するのは自分だけでは無い」という希望を持つことが

できるのです。

常に、人間には長所と短所の両方があります。みんな、それぞれの

「ダメなところ」を抱えながら生きている。だから、本音の部分

では愚痴もこぼすし、弱音も吐きたいわけです。(本文より)

 

こんな考えのもとで話を聞いてくれる人がいたら

それだけで心が癒されそうですよね! 

 

マスコミの報道を見ていると

日本はどんどん不寛容な社会になってきていると感じます。

不倫をした芸能人や不祥事のあった会社の社長が謝罪しているのを

見ていると、スカッとする人もいるかもしれませんが

「明日は我が身」と不気味なものを感じます。

建前ばかりの社会は息苦しい、そんな空気を敏感に感じて

心の病を発症する人たちは年々増えているのかもしれません。

 

もっと優しい社会を作るために、ぜひ取り入れたい考え方です。